Resource Integration for Value Co-creation in Archival Service Ecosystem

Author: RAHMAN Md Mukhlesur

本研究が対象とするアーカイブサービスとは,過去の重要な歴史的・文化的・行政的な記録を教育・研究目的に活用することで,利用者を含め社会に価値を創出していく支援プロセスを意味する.現在,多くの国・地方公共団体がアーカイブセンターを有しているが,アーカイブ資源の保存に重点が置かれ,資源の利活用による価値創出に関しては期待される役割を必ずしも十分に果たしていない.そこで本研究では,アーカイブの利用価値を高めるためのマネジメントフレームワークを開発することを目的とした.

目的達成のため,文献調査や事例調査からアーカイブサービスに関与しているアクターの同定,サービス戦略課題を探索し,サービス科学の知見を基にアクター間の価値共創について仮説構築した.そして利活用が特に求められる日本の地方アーカイブセンター92施設を対象に,計128質問で構成される質問紙調査を実施し,得られた68回答を記述統計,SmartPLSソフトによる共分散構造分析で仮説検証した.

分析の結果,アーカイブサービスは主にセンター管理関係者,従業員,利用者というアクターで構成され,とりわけ利用者は研究者,政治家,地域の代表者など,アーカイブ資源の潜在価値やその利用価値を高めうる多様な知識を有する者が関与していることを見出した.そして本来であれば,そうした利用者の知識を有機的に統合・活用することでアーカイブの新たな利用価値向上が可能なものの,アイデア交換の場や効果的運営のための組織要因が不十分であることを見出した.現に,調査対象のセンターの中にはウェブベースのサービスを持たない組織があり,全体の53%が利用者要求に応じたサービス改善・新規提案を企画する専門委員会がないことも判った.また全体の74%が他センターとの連携が無く,総じて新サービス設計,既存サービス品質改善における利用者参加や他資源活用が限定的なことを見出した.

記述統計に基づく考察に加え,共分散構造分析による仮説検証の結果から,本研究では効果的なアーカイブ管理フレームワークに必要な8要素として,(1)管理者の未来志向性,(2)従業員による利用者期待の持続的収集,ソーシャルメディア活用による(3)資料へのアクセス性(4)ブランド認知(5)アクター間のコミュニケーション促進,(6)利用者による新サービス開発,(7)従業員の新サービス開発意欲,(8)組織の創造的風土,が重要であることを提案し,その要素を含むアーカイブの利用価値を高めるためのマネジメントフレームワークを提案した.本提案は管理志向のアーカイブセンターの役割を,アクター間の価値共創促進の視点から変革し,アーカイブ資源の価値を高める必要性およびそのための実践的なマネジメント視点を提案するものであり,独創性と新規性がある.

 以上,本論文は,アーカイブサービスの課題に関し,サービス科学の観点からアーカイブ資源の利活用を進めるマネジメントモデルを提案したものであり,学術的に貢献するところが大きい.

Shirahada Lab.

北陸先端科学技術大学院大学 知識科学系 白肌研究室 Well-being志向のサービス学 Transformative Service Research (TSR)を推進.