Transformative Knowledge Management
変革を起こす知識経営
これからの経済・社会は,人々が自らのウェルビーイング(広義の幸福)を,将来世代にわたって実感・追求できる状態を目指していかねばなりません.このためには,より多くの人々が主体的かつ果敢に周辺環境の変化を洞察し,チェンジエージェント(変化を起こす者)として,社会の共通善とは何かを考え,周囲と自己の知を統合・内面化し,自分自身の変革を伴って,価値をデザインしその実現に向けて働きかけていく積極的な知識創造が必要です.
これまで知識経営は,いわゆる現場の暗黙知を組織の競争的資源として機能させるべく,いかに知識を共有・活用するかに主たる焦点がありました.これに対し,次代の社会発展を踏まえた知識経営は,知識の創造・共有を通じていかに変化を起こし,社会善に貢献できるかが鍵になるといえましょう.とりわけデジタル化によるイノベーションが進む現代の経済・社会では,新しい発想による多次元でのサステナビリティに配慮した価値デザインの在り方が,多くの人々の支持を得ています.
このような背景から,我々は知識を,ウェルビーイングを実感・追求できる社会構築のための変革的資源として捉え直すことで,新たに「トランスフォーマティブ知識経営」として領域を組織し,研究していきます.トランスフォーマティブとは,変革を起こす,並びに,その力がある対象を形容する言葉です.変革を促す知識および知識創造の在り方とは何か,変革力をつけるためにどのように知識経営を刷新する必要があるか,を共通の問いとし,従来から知識経営が有していた知識の創造・移転・管理の分析レンズを「知識による変革」の視点から定義し,理論構築,および変革を通じた実践的問題解決を目指します.
我々は下記の具体的なテーマを考える中で,知識経営のフロンティアを開拓していきます.
・ 責任あるイノベーションに向けた研究開発組織の知識経営
・ DX時代の社会的価値創造志向のデータ利活用
・ AIと人間の知識共創を活用した知識経営の倫理的課題とその解消
・ 医療の質を高める変革的組織学習の実践
・ 地域の持続可能性を高める次世代観光知識経営
・ 超高齢社会におけるシニアのウェルビーイングを高める起業知識共創実践
・ ウェルビーイング志向のサービス知識経営