Transformative Service Research: TSR

サービス経済は単に経済規模の拡大を追求する段階から,より質的に社会・環境の発展・持続可能性をも射程にいれた変革的サービス経済(Transformative Service Economy)を目指す必要があります.サービスは提供者と受容者相互がwin-win関係であることが価値共創プロセスの質を高め,より良い結果をもたらすと考えられてきました.しかしながら,両者の間の情報格差や経済状況格差によってその関係性は容易に崩れうるといえるでしょう.

視点を広げ人間と自然の価値共創関係を見れば,win-win関係は人間のみを対象としており,自然は経済的搾取の対象として扱われていることが多いといえます.人間のサービス活動の発展こそが環境負荷の大本であるという議論は,サービスの持続可能性という新しいテーマの出発点になっています.こうした,成長という概念の下で顕在化してこなかったwin-win関係の崩壊を指摘し,成熟したサービス経済が次にどのような価値を社会に対して訴求していくことが重要なのかを我々は問い,解を示していく必要にも迫られています.

このような背景のもと,私たちはこの価値共創関係を拡大し,人間と自然の価値共創に注目しそれをサービスの持続可能性の議論に展開させています.養蜂業をサービスとして捉えれば人間とハチの共創が見いだせるように,我々はもっと広い視野でサービス活動を見直す必要があると考えています.そして,「サービス経済が成熟するなかサービスこそが環境に負荷を与えており,我々は価値共創の質の持続可能性・持続的成長を考えなければならない」このメッセージをもとに,私たちは,欧米の研究者を含めた国際的サービス研究ネットワークのなかでこの考えを提案し協同で形にしています.

Services Marketing Quarterly (Taylor)

Journal of Retailing and Consumer Services (Elsevier)

Journal of Social Service Research (Taylor)



技術組織のマネジメント

技術開発の戦略的資源である技術人材を活性化させ,より効果的に活用することは技術系企業における重要な課題の1つです.私は技術人材を活性化するための効果的なミドルマネジメント方法に関心をもって研究してきました.組織の活性診断手法,および4つの活性化アプローチからなる技術人材の活性化マネジメント方法を提案し,日本の大手自動車会社の開発部門に適用しその効果を分析してきました.ここで開発した活性化診断手法は,サービス企業にも適用し組織活性度の評価にも用い,現場の経営管理者に納得性の高い組織内評価情報を提供しました.

最近では,活性度の実際的な効果としての創造的成果との関連性を分析しています.科学技術人材の試行錯誤という,技術イノベーションにとって不可欠な行為に着目し,これまでブラックボックスであった「難局面での研究開発行動」を開発成果に応じてパターン化することに成功しています.技術組織論の重要なテーマです.

試行錯誤行為は,サービスの文脈では(突発的な顧客の要求に柔軟に迅速に対応できる)サービスの即興性に向けた議論にもつながるかもしれません.これはサービス・アートの研究として国際的に研究が始まったばかりです.技術経営研究の知識を活かしてこうしたサービス領域の課題にも幅を広げることを目指します.


サービス満足度の可視化

脳活動計測機器の開発が進んでいます.サービスは一言で言えば「プロセス」ですから,動的かつ客観的測度で人間の脳活動を測定できる装置は,これからのサービス研究への応用が大いに期待できます.これまではfMRIや脳波計を使っての実験が活発になされてきましたが,最近では光トポグラフィと呼ばれる,脳内のヘモグロビン濃度の変化を多点で測定することで画像化する装置も注目されています.

私たちはこの技術をサービスのマーケティングに応用し,サービス価値提案に対して興味を持っているときの脳活動や,商品の使用イメージを持つときの脳活動を分析しています.私は純粋な脳科学者ではありませんので,主にサービスマーケティングの立場から,企業の専門家と共同で取り組んでいます.

特に,人間の思考を司るとされている前頭葉の活動に注目して研究をしていますが,「どの領域がどのような活動特性がある」等の,エリアを指定した上での詳細分析は更に必要です.また,脳活動だけでなく視線計測も合わせて総合的に人間の認識に即したマーケティング研究も始めています.今後は脳活動の傾向から被験者をクラスタリングしてアンケートの主観評価や視線の特徴を分析する等の,今までとは逆のアプローチを検討し,マーケティングツールとしての有用性を分析していきたいと考えてもいます.