Value co-creation oriented strategic electronic roadmapping

Author: Pornprom Ateetanan (石川・博士)

ロードマッピングとは企業が自らの事業を効果的に進めていくうえで有効な戦略形成手法の1つであり、そこには利害関係者の参加を通じた価値共創、およびそれを支える場の活性化が求められる。しかしながら実践的課題として、利害関係者が直接的に参画する機会を設定することの困難性や、それゆえに発生する限られた時間制約のもとでの価値共創の限界性が指摘されてきた。こうした課題を克服する手段として電子的にロードマッピングを実践することへの期待が高まってはいるものの、どのようにそれを進めていくべきかの議論を含め実証研究は十分にない。

 このような背景のもと、本研究はまずサービス研究の蓄積から価値共創実践に必要な視点を抽出するとともに、タイでのロードマッピング実践の参与観察を通じて、ロードマップ作成における望ましい価値共創行動について分析した。結果、(1)開始時における協同性(Co-initiating)、(2)RM作成における共同性(Co-acting)、(3)作成したロードマップに基づく行動認識変化における共同性(Co-evolving)の観点から計9つの行動指針を新規に導出した。これらは参加者が質やプロセスにおいて納得できるロードマップ作成をしていくために重要な行動指針およびファシリテーター指針といえる。

 本研究は次に、ロードマップ作成手続き上のステップを様々なオンラインコミュニケーションツールを活用することで、場所や時間に制約されずにロードマップ形成が可能な技術導入のあり方を検討している。既存の方法論を適用した場合と、オンラインツールを使用した場合とを実験を通じて比較し、参加者の価値共創に与える影響(前述のCo-actingに関する項目の評価)や、ツールの使いやすさなどの項目をもって多面的に調査し、オンラインツールを用いたロードマッピングの有効性を確認した。

 本研究はこのように価値共創を促進するための行動指針とそれをより制約を受けない形式で展開していくための技術利用の可能性について具体的に考察することに続き、実践展開の際に必要なマネジメント事項について、経営関連の学術研究者、ロードマップを活用して経営意思決定する立場の経営者、およびマップを作成している者らに調査し、優先度を考察している。AHP(Analytic Hierarchy Process)という意思決定手法を用いて分析したところ、これまでの研究では必ずしも重要だという認識が十分になかった、リテラシー要素や組織文化要素などが優先事項として顕在化した。これは電子的ロードマッピングの実践において有用な知見を提示している。

 以上、本研究はロードマップ作成において参加者間の価値共創を促進する要素を示し、それを効果的に実践するためのツール導入の意義及びその方法を明確にした。これは知識経営および技術経営分野に学術的に貢献するところが大きい。

Shirahada Lab.

北陸先端科学技術大学院大学 知識科学系 白肌研究室 Well-being志向のサービス学 Transformative Service Research (TSR)を推進.