A Knowledge Focused Servitization Management for Business Innovation

Author: H.M. Belal(石川・博士)

本論文は製造業におけるサービスビジネス創造のためのマネジメント方法論を構築している。関連する議論としてはこれまで、製造業のサービス化というテーマで、サービス化の定義から、サービス化する必要性、そしてその推進の担い手に至るまで様々な観点から研究がなされてきた。しかしながら、どのようにしてサービス化を実践していけば良いかに関しての研究は十分な蓄積が無い。こうした背景から、本研究ではサービス化の概念を、「組織がサービス知識を基に自らのビジネスを変革していく過程」として定義し、(1)知識空間概念、(2)技術開発人材のサービススキル開発、そして(3)企業間連携概念、に基づく知識志向のサービス化マネジメント方法論を構築した。具体的に(1)では、知識空間を知識が生み出される資源の組み合わせの集合として定義し、(2)では、製造業の技術開発人材に対し、個人単位・集団単位で、顧客に便益をもたらすための支援行為としてのサービス志向を促進するフレームワークを開発した。(3)は、単一組織内では持ち得なかった資源としての知識を、他組織と連携して獲得し自らの知識空間を広げることを説明するための概念基盤として形成した。

本方法論はこれら3要素を状況に合わせて順不同で活用していくことが必要であるが、なかでも新規性・有用性が高いと評価されたものは(2)サービススキル開発のためのツールである。本博士論文では、個人がサービス志向に意識変革するための個人用ツールと、集団で知識を共有させる集団知識創造支援ツールの2つを開発している。技術者はそもそも顧客接点に乏しいために、顧客の便益を意識しにくく、どうしても技術中心志向に陥りがちである。本ツールはその特徴を基に、技術を思考の開始点としつつも、中継点で顧客の当該技術の新しい使用価値を検討させ、そこから柔軟に顧客との長期的関係性を志向させるようなチャートを設計した。また、集団活動に関しては、ビジネスモデルの考え方を応用し、知識空間や潜在的な企業間連携の必要性についても考えさせるようにした。

 本方法論をある石川県内製造業・技術開発部門においてアクションリサーチとして約1年にわたり展開し、複数回の質問紙調査や経過観察を実施して効果を検証した。そして現場の技術開発人材のサービス志向が格段に高まったことを示した。企業間連携に関してはアクションリサーチの過程では十分に検証しきれていないのが本研究の課題ではあるが、そうした検証が足りない部分に関しては、製造業がサービスビジネスをしている先駆事例を分析することでマネジメント方法論としての妥当性を示した。

 以上、本論文は、製造業のサービス化についてその実践的な方法論を提案し、実証データを用いてその妥当性を検証したものであり、学術的に貢献するところが大きい。

Shirahada Lab.

北陸先端科学技術大学院大学 知識科学系 白肌研究室 Well-being志向のサービス学 Transformative Service Research (TSR)を推進.